レース概要と前提条件
初めてのウルトラマラソンとして挑戦したチャレンジ富士五湖100kmは、12時間27分14秒での完走となりました。平均ペースは7:29/km。目標としていた11時間半〜12時間半には収まったものの、内容としては明確に課題が残るレースでした。
当日は午前中が晴れ、午後は薄曇り。風も弱くコンディションとしては恵まれていましたが、コースは想像以上に厳しいものでした。富士山麓を巡るこのレースは、一見走りやすそうに見えて細かなアップダウンが絶えず、特に西湖・精進湖周辺から後半にかけて脚を削ってきます。
最後に北麓公園へ登り返す構成も含めて、「最後にかけて試される」レースでした。
直近のフルマラソンは3時間16分。ウルトラは今回が初挑戦で、ペースは前半5:30〜6:30/km、後半6:00〜7:30/kmでの完走を想定していました。
結果はこちら。後半はかなり崩れてしまい、ほぼ走れず。悔しさの残るレースでした。
| 計測ポイント | スプリット | ラップ |
|---|---|---|
| Start | 0:01:00 | 0:01:00 |
| 10km | 1:07:37 | 1:06:37 |
| 20km | 2:12:36 | 1:04:59 |
| 30km | 3:14:59 | 1:02:23 |
| 40km | 4:22:56 | 1:07:57 |
| 50km | 5:33:05 | 1:10:09 |
| 60km | 6:48:11 | 1:15:06 |
| 70km | 8:09:31 | 1:21:20 |
| 80km | 9:28:44 | 1:19:13 |
| 90km | 10:57:34 | 1:28:50 |
| Finish | 12:28:14 | 1:30:40 |
通過タイムから見える“練習不足”
前半30kmはむしろビルドアップ気味に進み、30kmまでが最も速い区間でした。一方で40km以降は徐々に落ち始め、60km以降は完全に別のレースになっています。
特に80km以降は明確に崩れており、ラップも1時間20分台後半から1時間30分台へ。体感としての「もう走れない」が、そのまま数字に出ています。
ただ、これはオーバーペースではなく、「後半を支える準備不足」が原因だったと感じています。

でも、いいんです。完走はできました。それだけは自分をほめて、誇りに思いたいです。
ここからは前日から当日までのレポートです。
前日|静かな準備と小さなミス
前日は18時ごろ、自家用車で都留に入りました。会場周辺の宿はかなり高騰していたので、少し離れた場所に宿を取ることにしました。今回泊まったのはスターらんど。薬草の湯が有名なようで、この日は同じようなランナーと思われる方も結構泊まっていたようです。正直館内は古さも感じますが、居室はリフォームされていてきれいでしたので全く問題ありません。快適に過ごすことができました。
夕食は近くの定食屋で早めに済ませ、スーパーで夜食と朝食を購入。特別なことはせず、できるだけいつも通りに過ごしました。ただ一つ、小さなトラブルがありました。部屋でゼッケンをつけようとしたときに、安全ピンを忘れていることに気づきます。慌てて近くのホームセンターへ。こういう“どうでもいいミス”がレース前にはやけに焦りを生みます。




装備の確認を終えて横になりながら、「100km」という距離の現実感は、正直この時点ではまだ薄かったと思います。
当日の装備はこんな感じ
- ブルックスゴーストマックス2
- SALOMON 12Lのベスト
- モンベルのウィックロンシャツ
- ミズノマルチポケットパンツ
- CWXのキャップとアームカバー
など。いつもならミレーのドライナミックメッシュを着るところですが、長時間着用でにおうようになっていたことから自粛。ただ、汗離れのすばらしさを痛感しました。次がもしあるなら対策をして着用します。

当日朝|非日常のスタートラインへ
宿を出たのは午前3時。会場には30分ほどで着く想定でしたが、駐車場の入り口で想像以上の渋滞に巻き込まれ、車を停めたのは3時45分ごろでした。そこからシャトルバスに乗って会場入り。到着は4時を少し回ったあたり。
スタートは4時45分。結果的にはちょうどいいタイミングでした。

会場はまだ暗く、空気はしっかり冷えています。上着を持ってきて正解でしたが、この後それを背負って走ることを考えると判断は難しいところです。
このとき、つい温かいコーヒーを飲みました。寒さに負けた選択でしたが、後から振り返ると序盤の尿意はこれが原因だったかもしれません。

スタート〜30km|まだ“走れている世界”
スタート直後はかなり混雑していて、思うようにペースは上がりません。ただ、無理に前に出ようとはせず、「これは脚を温存している」と言い聞かせて流れに乗りました。
山中湖に出たあたりから一気に視界が開けます。桜と富士山、そして広がる湖。この景色の中を走れるのは、この大会ならではだと思います。まだ余裕があり、純粋に楽しい時間でした。
ただ、30km手前で左ひざに違和感が出始めます。いわきサンシャイン以降、少し気になっていた場所です。このときは「まだいける」と判断しましたが、ここからつらい道のりが始まるのでした。
30km〜50km|静かに始まる消耗
40kmを過ぎると、ペースを落としていても明確にきつくなります。「まだ序盤のはずなのに」という違和感がありました。
50km走を2回しかやっていなかったことが、ここで現実として返ってきます。脚に余裕がない状態で距離を踏み続ける感覚。フルマラソンとは明らかに違う領域に入っていました。
ラップはまだ大きくは崩れていませんが、内側では確実に削られていました。







60km手前|音楽と感情
かなり疲労が溜まっていたタイミングで、イヤホンを解禁しました。最初に流れたのはサンボマスターの「輝きだして走ってく」。あまりにも状況にハマりすぎて、少し泣きそうになります。
“痛みと苦しみをはを食いしばって抱きしめる君にだけ起こせる奇跡があるってことを”
サンボマスターのライブでは泣きそうになったことがありますが、まさか音源でも泣けるとは。ウルトラはメンタルのスポーツだと言われますが、その意味をこのあたりで初めて理解した気がします。
60km〜70km|削られていく下り
精進湖へ向かう長い下り。走ろうと思えば走れる状態でしたが、意識的に抑えました。それでもダメージは確実に蓄積していきます。
対向するランナーと「ナイスラン」「ファイト」と声を掛け合う時間は、とても印象に残っています。ただ同時に、「帰りはここを上る」という現実も見えていました。この時点で、ここは歩くと決めていました。走って登っていくランナーは強すぎます。

70km〜85km|崩壊
西湖から足和田出張所にかけての下りで、完全に崩れました。ひざの痛みがピークに達し、まともに走れなくなります。ここで初めてリタイアが現実的に頭をよぎりました。
長めの休憩とストレッチを入れて再スタートしますが、状況は変わりません。
ただ、その中でいくつかの発見がありました。ひざの皿の下を押さえると痛みが軽減すること、曲げ伸ばしで一瞬楽になること。テーピングしておけばよかったと、このときほど後悔したことはありません。
500m走って200m歩く。そんな進み方でした。
周りのランナーに抜かれていく時間もきつかったです。ゼッケンでスタート時間や距離が分かりますが、同じゼッケンの色がほとんど見えず、「自分が最後なのでは」と錯覚する場面もありました。
さらに、みぞおち付近に強い痛みが出て立ち止まることもあり、身体は完全にバラバラでした。
85km〜ゴール|それでも進む理由
85kmを過ぎると、「走る」ではなく「進む」状態になります。肉体的には、間違いなくこれまでで一番きつい時間でした。
沿道の応援が増えてくるゾーンで、「すごい!すごい!」と声をかけられます。そのとき、「そう、すごいんだよ。こんな状態でも前に進んでるんだよ」と、自分の中で何かが肯定された感覚があり、こんな簡単な言葉なのに泣きそうになってしまいました。
北麓公園への最後の上りは、ほぼ全員が歩いていました。自分も例外ではありません。「最後の1kmだけは走る」と決めて、ここは歩き切ります。悔しさはありましたが、それがこの時の限界でした。
上り切ったあとの下りは、たった1kmほど。なのに異様に長く感じました。
脚をかばいながら進み、ようやく競技場へ。
ゴールしたらいよいよ涙がこぼれるのではと危惧されましたが、名前がアナウンスされると、現実に引き戻されます。不思議と涙は出ませんでした。
そして、ゴールテープを切りました。
ゴール後|達成感と、それ以上の感情
ゴール後は芝生に倒れ込みました。達成感はありましたが、それ以上に悔しさの方が大きかったです。
しばらく動けず、妻にスポーツドリンクとみそ汁を持ってきてもらいました。このみそ汁がとにかく体にしみました。同じように飲んでいるランナーが多かったと聞いて、妙に納得しました。
正直、「しばらくは出なくていい」と思うくらいにはきつかったです。
あの日を振り返って
今回の100kmは、富士山をさまざまな角度から楽しめる特別なレースでした。夜の富士山、山中湖の桜、そして最後に富士山へ向かって登っていく景色。どれも印象に残っています。
ただ、それ以上に強く残ったのは、自分の弱さでした。おそらく脚が痛くなくても、どこかで歩いていたと思います。ウルトラはメンタルのスポーツと言われますが、今回感じたのは、それ以上に「準備がすべて」ということでした。
もし次があるなら、もっと準備して、もっとうまく走りたい。
そう思えるだけの経験を、この100kmで得ることができました。でもしばらくはやめておきます…

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